nc旋盤でやってはいけないことを紹介!私は元旋盤工経験者です

NC旋盤って、ちょっと地味なお仕事?いやいや、日本の物づくりを支えている大切な仕事の一つです。

NC旋盤 チャック・ブッシュ

私もかつてNC旋盤会社で約4年間働いていたので、その時に経験した『NC旋盤ではやってはいけないこと』を記事にします。

 

現在は、NC旋盤会社ではない製造業に勤めているので、実物の写真は撮れませんが、ご了承ください。

 

また、これからNC旋盤の道を考えているのでしたら、

もどうぞ。

 

では行きます!

 

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NC旋盤で絶対にやってはいけないこと№1

まず、旋盤業界へ入ったら安全第一での作業は当然なこととして、『実際の作業でやってはいけないこと』と言うのがいくつかあります。

 

その中で、絶対にやってはいけない!

と、私は新人の時に耳タコになる程、毎回言われてたことがあります。

それは、

 

材料を間違えてはいけない!

 

です。

 

NC旋盤屋に限らずですが、特に同じ形状の物を量産するNC旋盤業界では、材料を間違えてしまうことは、最悪の場合廃業にも繋がる重大なミスになります。

 

ステンレス系の金属というと、一般的には磁石に付くか付かないかで判断出来ますが、実際のステンレス鋼の種類はたくさんあります。

磁石が付く400系のステンレスもあれば、快削ステンレスだったり。

 

3年くらい働いているとある程度は、光沢具合や切子のようす。

触った感じである程度は違いがわかってきますが、ハッキリとした証拠(品質保証証や生産履歴)がないと、お客様へ断言することができません。

 

例えば、アルミ合金材の場合で

A5052は一般的な工作加工に向いてる材料ですが、その固さと、

A7075というアルミのなかでも凄く硬い合金を比較すると、3倍以上違います。

さかし、初心者だった場合、見た目ではほとんど見分けがつきません。

 

また、鉄系の金属でも、SCMだったり、SUMだったり、S50だったり。

一見同じ鉄だから、いいか。

なんてことをしてしまったら大変です!

 

焼き入れをしたけど硬度が上がらないし、熱処理した時の色が若干違うけど、材料まちがえてなんかないよね?

 

このような電話が客先からかかってきたら、私が勤めてた旋盤会社はもちろん、当時の協力会社(外注)達も、一気に経営者達は、青ざめた顔色になります。

 

※なぜ協力も?と疑問に思うかもしれませんが、旋盤業界って、けっこう横のつながりが強いんですよね!持ちつ持たれずの関係。漁師仲間みたいな感じかな。

協力会社の繋がりについては、あとで別記事にします。

 

話しは戻り、客先より

材料間違えてないよね?

このような電話を貰ったことも、実際にあるのですが、その時は引き続き部品を作り続けていたNC旋盤機を完全に止めて、後ろの給材機に乗せてある材料は全て廃棄。

 

機械内も、くまなく探して絶対に疑いがかかった部品の残りが無いことを確認するまで、機械は動かしません!

 

NC旋盤では、機械内は油が勢いよく出ていますので、機械のドアの隙間やベルトコンベア、主軸の下とかに油で部品が貼りついていることもよくあります。

 

そのあたりも、徹底して掃除して、完全に疑いのかかった部品が0の状態にして、正確な材料で1から作り始めます。

 

結局、材料違いの疑いが晴れれば問題なく済みますが、万が一間違えが発覚した場合は、最終ユーザーのリコールに費やした費用を負担(数億円だったり、自動車関連だとそれ以上)しなければならない。という可能性もあります。

 

それくらいに材料間違いは、致命的なミスに繋がります。

なので、

材料を機械に載せる時は、確実に間違いない材料を乗せましょう!!
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NC旋盤の機械的にやってはいけない作業

続いては、NC旋盤加工を段取りする時にやってはいけない作業について紹介します。
  • 曖昧なブッシュ調整
  • キツ過ぎるチャック調整

 

この2つの調整具合は、細心の注意を払って調整するようにしましょう!

 

まだ、段取り初心者(段取り経験半年くらい)でしたら、必ず先輩(ベテラン者)に確認をしてもらうようにしましょう。

 

それでは、これら2つの調整具合がイマイチだった時に起きる症状について紹介します。

 

曖昧なブッシュ調整で起きる不具合

旋盤加工の命は、同心度です。

いかに狂いなく、ブレることなく材料を回転させるかで、製品の精度や刃物の寿命、段取りスピードなど、あらゆる作業と製品に影響をもたらします。

 

当然ですよね!芯ブレせずに回転させている材料を前提で、プログラムを作り、刃物を調整するんですから。図面でも、中心線を0として寸法表記してありますよね。

 

もし、どうしても芯ブレを起こしてしまっている。ドリルも刃物もプリセッターできちんとセットしているのにどうしても、寸法精度が出ない。

 

そんな時は、ブッシュ調整を疑って下さい。

ほとんどの場合、緩いか、キツ過ぎるのどちらかです。

(経験上、緩んでいたことが多かったです)

 

調整は、バッチリ!となっても寸法が出ない時は、ブッシュの摩耗、もしくはキズがあるはずです。

 

一度、同じ径の違うブッシュに交換してみませんか?

すり減ってないブッシュに交換するだけで、スパッ!と寸法が決まることは良くあります。

 

相当なベテラン者になると、自分専用のブッシュをキープしてて、他の人には触らせない。と言う人もいるくらいですから、ブッシュ調整はNC旋盤加工の命とも言えます。

 

キツ過ぎるチャック調整で起きる不具合

ブッシュ調整は、問題ない!

でも、寸法が安定しない!!

 

そんな時は、もう一度チャックの固さ調整を確認してみましょう。

 

チャックは、初心者の時はしっかりと材料を掴まなければならないから、キツ目にするように!と教えてもらいましたよね!

 

きっと、初心者の時でしたら、精一杯の力で締まるくらいの強さにしていたと思います。私はそうでした。

 

ところが、段取り作業に慣れてきてあなたの腕力もついてくると、ついキツくなりすぎる(強すぎる)チャッキングになっていることが、時々あります。

 

NC旋盤を段取りする時は、ほとんどの場合新しい材料の先端付近でチャッキングの強さを決めます。ブッシュ調整も、概ね先端付近でやってしまうことが多いですね。

 

ところが丸材(特に引き抜き材)って、先端部分のおよそ200㎜くらいまでは若干細い(0.01~0.03)傾向があります。そのため、その部分で調整が最適に出来ていても、段取り途中の寸法出しをしているうちに材料はどんどん消費していきます。

 

気が付いたら、500㎜くらい使っていることだって製品や段取りの経験度によっては良くあります。

すると、0.03㎜もの直径が違っていた場合、チャッキングやブッシュの強さ加減は、かなり違ってきます。

 

もし、ここまで読んでくれたあなたが、『えっ、そうなの?』と思うのでしたら、まだまだ経験が足りませんよ。

 

先輩達の段取りする様子をしっかりと観察して、見て下さい。

 

きっと、一通り段取りが終わると、材料をけっこう出した状態か、もったいないけれど、200㎜くらい突っ切ってから、最終的なブッシュとチャッキングの強さ調整をしていると思います。

 

そこを疎かにすると、いつまでたっても、なかなか寸法が定まりません。

 

ある程度段取りが慣れてくると、この材料は先端部はカットして、製品加工としては使うのは辞めよう。というプログラムを入れたり、支給材とかで、使える材料の制限がある時は、製品の寸法公差を見込んで、段取りをします。

 

  • 先端部(若干新ブレを加味して)でも、寸法公差に入る。
  • 中央部分の一番美味しい部分では確実に寸法の真ん中を狙う。

 

これらを踏まえる為に、段取り前に材料の

『両方の先端・中央部を数か所』をマイクロで計ってからチャック・ブッシュ調整をします。

 

これらが自然に身につくようになれると、脱!初心者と思って自信を持ちましょう。

 

注意!

チャックが緩すぎる(給材機の押す力に負けるくらいだ)と、刃物を全滅させてしまい、事故って(材料がぶつかると)最悪の場合、機械修理が必要となってしまいます。

 

キツ過ぎるから少し緩めるといっても、ほんのちょっとだけですよ!

強すぎて、コレットチャックが割れないくらいにしましょう。というくらいです。

 

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NC旋盤機でやってはいけない大量の給油

NC旋盤機は削った切粉(削りカス)が機械の下にどんどん溜まってきます。すると、油の流れが悪くなり、年期の入った機械だと機械の外へ流れ出てしまったりします。

 

床が油まみれにならない為の下に引いてある『オイルパン』にたっぷり油が溜まっている事って、ありませんか?

 

NC旋盤会社だと、まず1台や2台と言うことはありません。少なくても数台、もしくは数十台機械が並んでいます。

 

その一台一台全てを管理するのは、人手も必要ですがあまり多くの人を配置すると、人件費でコストUPしてしまい、薄利多売のNC旋盤業では現実問題として、厳しいです。

 

その為、機械内の油が少なくなって、切削時の油ホースの出が悪くなってくると、一気に新しい油を足してしまう人もいるでしょう。

 

これ、ダメですよ!!

 

ペール缶1本分(18ℓ)くらいだったらそれほど問題ありませんが、これが2本、3本分も新しい油を一気に足してしまうと、間違いなく寸法は狂います。

 

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NC旋盤で一気に新しい油を足すとダメな理由

人も機械も一緒で、一度にまとめて!っていうのは、良くありません。

それがたとえ新しい切削油でもダメです。

 

理由は、

  1. 機械内の油温が一気に下がってしまう
  2. 新しい油となじんだ油では、切削抵抗や粘度が違う

主にこの2つがダメな理由です。

 

 

特に『1.機械内の温度が一気に下がってしまう』は、重大なミスです。

 

機械内の油って、けっこう温かいですよね。夏だとたとえ工場内の空調が利いていても、やや熱いくらいになってることもあると思います。

 

これが、常温の油(ましてや冬、外の油倉庫においてあった油)は、あきらかに冷えてます。

 

この油が切削部にかかると、金属の熱膨張率の違いなどで、一気に寸法が狂ってしまいます(直径で0.1㎜くらい狂うことだって普通にあります)

 

また、切削抵抗も変わってしまうので、最悪の場合、加工工程前半部分のドリル明け時にドリルが折れてしまい、その後のザグリバイトが全て折れてしまうことだって、私は経験しています。

 

その時のザグリバイトは先輩に削ってもらっていたので、ひどく怒られました…

 

という理由から、

NC旋盤機を扱う時の給油は気を付けましょう!

 

まだまだあります。NC旋盤業でやってはいけないこと。

 

容易にしてはいけないNC旋盤の加工プログラム受け渡し

NC旋盤で製作する品物のほとんどは、量産品です。

つまり、薄利多売なお仕事です。

 

部品の1つ1つの利益率は非常に少ないです。その為、加工サイクルを3秒縮めたり、ツラ舐めや突っ切り幅を短くして使用材料を0.数ミリ縮めたりして、利益率を上げていきます。

 

それだけではありませんが、加工サイクルを短くする為にプログラムで逃がし量を最小限に留めたり、できるだけG1ではなくてG0を使うようにしたりします。

 

そのようにして作り上げたプログラムを容易にライバルメーカーや、クライアントへ渡すのは危険ですよ!

 

特にベテラン者が組んだプログラムは、ラーメン屋でいうところの秘伝の出汁です!

 

自社しか出来なかった、加工サイクル寸法精度のノウハウをそのまま渡してしまうようなものです。

 

その為、よほどのことが無い限り、絶対にプログラムは渡さないようにしましょう。

 

ちなみに、私がかつて勤めていた会社で、協力会社へプログラムを提供するときは、外注用として、肝(秘伝の出汁)の部分は書き直して渡していました。

 

真似されてしまっては、たまりませんからね!

 

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NC旋盤でやってはいけないことのまとめ

少し長くなってしまいましたのでまとめると、

  • 材料は絶対に間違えてはならない
  • 曖昧なブッシュ調整(芯ブレの可能性大)
  • 強すぎるチャック調整もダメ
  • 大量の新しい油の給油
  • 安易な加工プログラムの受け渡し

 

他にもやってはいけないことはたくさんありますが、NC旋盤初心者(1~2年目)としては、これら5つくらいは頭の片隅に入れといてもらえると、きっと格段に技術は向上します。

 

また、NC旋盤で不良NGを出さないようにすることにも貢献できるでしょう。

 

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さぁ、今日も頑張ってNC旋盤の技術を1つでも多く習得しよう!!

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