NC旋盤加工職へ転職して得た教訓の内容です。旋盤業へ就職・転職を考えている人へ少しでもNC旋盤のことが伝えられるよう、素の状態でお伝えしていきます。
それではNC旋盤加工から得た教訓について、少々熱く語りたいと思いますので、
宜しくお願い致します。
(上の写真は私がNC旋盤で作ってた製品の一部です)
NC旋盤加工を語る前に自己紹介
私は以前4年近く無我夢中でNC旋盤加工会社で働いていました。旋盤業界へ入る前は、金型屋で働いていて、丸物関係の部品はよく外注として、旋盤業者へお願いしていました。
実際にNC旋盤を触る前までは、価格の事はほぼ旋盤屋さんの言いなりです。ところが、いずれ旋盤業へ転職してみると、その価格に驚きです!
金型屋から何故、旋盤業へ転職したのかは、当時の勤め先の業績悪化の為です。そこで、安定していると言われていた量産業界で、なじみのあった旋盤業へ足を踏み入れることにしました。
ここから先は、前回の記事
のなかで触れてる、メリットとデメリットの続きの内容です。
NC旋盤業へ転職してわかったシビアな価格
↑長さが約12ミリ、一番太いところで直径3ミリ
工業系へ勤めている方だったら、旋盤部品の数が多いことはご存知かと思います。
1回の注文数が、1000個、5000個、数万個なんてよくあることです。
それも、大手旋盤企業ではなく、小さな町工場レベルの会社でも、1ロット1000個とかも普通にあります。
※量産品の1つで、この製品単価は約25円でした。
また、物によっては1個あたりの単価については凄くシビアで、1円未満まで計算されているものだってよくあります。
例:13.3円/1個
小さく簡単な形状の製品で、1個当たりの単価は30円だったとします。それが1000個の注文で、3万円です。
もちろん、この中には
- 材料費
- 工具代
- 機械稼働費
- 人件費(機械段取り・定期検査・製品検査)
これらが含まれています。
この4つ以外にも会社経営の為に必要な経費も含まれます。
ハッキリ言って、1000個も作って3万円にしかならない。そこから必要経費を引くと利益は一体いくらなんだ?
ところが、NC旋盤業界ではこのような製品を何種類も作ったり、数万個という数を作り出して、利益を出しています。
もちろん、1個あたり数十円の品物ばかりではなく、数百円だったり、大きくなると数千円ってものもあります。
私が勤めていた会社では、1個当たりの単価が100円を超えるものはほとんどなく、数が30個未満だったり、凄く特殊で難しい品物とかでない限り、1製品1ロット当たりの売り上げで、十万円を超すというものは、1年に指で数えるほどしかありません。
それほどまでに、NC旋盤業の価格はシビアです。
まさに、薄利多売の量産業界です。
※1ロット1000個の発注を受けていて、出荷検査時には、『先端の穴』を全て人の手で0.14㎜の針を入れて確認してます。
CN旋盤業界へ転職して学んだ「もったいない精神」
NC旋盤で造られる製品の1個当たりの単価は、ほとんど安いです。1個あたりの製品から生み出される利益は、1円未満ということも珍しくはありません。
だからこそ、NG(不良)品の数を少なくして、1秒でも早く機械を動かす。
そういう精神が身に付きました。
それと、日本人ならではの「もったいない」という言葉と感覚もNC旋盤屋で身に付きます。金属から製品を作り出す旋盤業界、金属を削ると、キリコという削りカスが出ます。
この削りカスをリサイクル業者が買い取ってくれます。
特に真鍮(シンチュウ)や銅などは、この削りカスも他の金属より高く買い取ってくれます。
それを知っている大手企業からの注文の場合、この削りかすの買い取り価格まで見積もりに含めることを要求されることだってあります。
使う材料から、必要な製品の重さを引いたのが、削りカス(キリコ)です。
もちろん、それには30%くらいの誤差は見てくれますが、数が多い製品の場合はまさに「チリも積もればなんとやら」です。
NC旋盤業では、削りかすは産廃料として、製品単価に上乗せ出来るようにしたいのですが、先ほどの真鍮(しんちゅう)などの場合は、逆に製品単価から
切りこ(削りカス)買取代、としてマイナスせざるおえない時も有ります。
この、1個当たりの単価へ1円上乗せできるか、1円マイナスさせるかで利益は全く変わってしまいます。
もの作りの世界で、より良い製品を作り出すもはもちろんですが、量産の世界へ入って製品に対する価値観は、私のなかでは凄くシビアな感覚となります。
先ほどの香水スプレーのノズルの先端に穴が開いていないと、不良品です。
先端へは直径0.15ミリのドリルで穴を開けています。
しかし、何かの拍子に穴を開けるドリルが折れてしまって、それに気が付かずに機械が動き続け、製品を作り続けていたら、それは全て不良品となってしまいます。
ドリルと言っても0.15ミリです。
めちゃくちゃ小さい穴です。
1個の利益は数円しか出ない品物です。
また、万が一不良品がお客様のところへ行ってしまったら、信頼は一気に無くなります。
お客様のところでは、いちいち全ての製品をチェックしません。
だって、NC旋盤屋で検査して、納品しているから当然ですよね。
穴が開いていない不用品が見つかるとしたら、商品としてお店で並び、お客様が香水を買って、いざ使おうとして、
となって初めて穴が開いていないことが発見されます。
しかし、そうなってしまっては、小さな会社にとってはもう手遅れです。
商品の自己回収、食品から製造業、車のリコールなど多くの業界で起きてはならない不良品の流出です。
その責任と賠償はいったいどこでどうなるのでしょう。
考えただけでも、恐ろしいですね。小さな会社だったら、1回の不良品流出で立ち直りはほぼ不可能です。
旋盤業界は大手企業がビックリする原価だった!
かつて金型屋で働いていた時に旋盤加工の部品を外注で作ってもらっていました。
その製品を金型の中に2個セットして、1つの製品を作ります。
そして出来上がった製品を大手自動車メーカーへ部品として供給していました。その時の価格と数量は、
18,000円/1個
この製品を月に200~300個納めていました。
このような価格だったのですが、金型屋から納める製品1つにつき、NC旋盤部品が2つ必要です。その部品は外注先から1個あたり1,200円で仕入れてもらっていました。
つまり、2,400円は必要です。
純粋に18,000円ー2,400円
=15,600円
この中から、金型屋での利益を出さなければなりません。
ところが、金型屋を辞めて旋盤業界へ入ると、ほぼ同じ製品を1個50円くらいでる作っています。
では、残りの1,150円分はどこへ行ったかというと、NC旋盤屋と金型屋の間に入っているバイヤーの方が持って行っていたのです。
バイヤーといっても、口利き人みたいな人で個人で手広く小さな町工場を紹介してくれてた人です。
当時その部品1種類だけの差額分は、
1,150円×200本=23万円
もし、これを直接NC旋盤屋と取引出来ていたら、50円ではなく、500円で買っても金型屋としては650円×2本なので、1,300円の利益となります。
NC旋盤屋では、50円だったものが500円になるので、それはもう小さな町工場としては大きな利益となります。
また、その部品はNC旋盤の特性上、一度機械を段取りしてしまえば、2日もあれば300本は作れてしまいます。
それにこの製品は約1年続いていたので、そのことを考えると金型屋とNC旋盤屋の両方とも利益は計算しなくても、検討がつきますね。
これは、金型屋からNC旋盤業界へ移ったからこそ分かった事実です。
きっと大手メーカーの購買の人達が知ってしまったら、もっと価格を叩かれたと思います。
NC旋盤業で学んだ教訓
精神論になっていまいますが、気合と根性は凄く付きましたよ。
最終ユーザーに提供されるまでの価格と、まさに製作をした業者での価格差にも驚きました。
- NC旋盤業で仕事をすると、小さな工業部品の原価が分かる
- また、1分1秒を無駄にせず、使用する工具や材料、消耗品も末端の製造業では工夫しまくっている。
これらの事を身を持って学びました。
私はNC旋盤業で得られた教訓として、
『一つの製品に込める真剣な思い』
これを学ぶことが出来て今は違う会社ですが、
その気持ちを忘れることはありません。
NC旋盤加工業へ転職して学んだ教訓のまとめ
まとまりのない文章でしたが、これからNC旋盤業へ足を突っ込もうとしているのでしたら、少しは熱意が伝わったと思います。
IT産業や金融業界からくらべると、ものすごく地味で油臭く、お給料だって良くないかもしれません。
しかし、今も進化し続けているハイテク機器の目に見えないところでは、NC旋盤加工品は数多く使われています。
これからNC旋盤業を目指そうとしている方へ、少しでも参考になれたらいいな。そういう気持ちで、現実をそのまま書いてみました。
また、冒頭で触れましたが、今回の記事は
で熱く語ってしまったメリットとデメリットの続きの内容です。
今後NC旋盤業で働くことがありましたら、思い出してもらえると幸いです。
次は、NC旋盤業へ「向いている人・向いてない人」のことを書いてますので、よかったらどうぞ。
最後まで読んで頂き、有難うございました。
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